新しい学びのカタチ
生徒が自分から取り組み、
「したい」を〈できる〉にする力をみんなで身に付けていく
そんな塾です
倫理

ルネサンスと近代の幕開け

ルネサンスとは、地上に生きる人間の感情や能力を肯定したたえる文化芸術運動といえます。古代ギリシャの文芸芸術の復興を通じて、神・教会の権威に抑え込まれてきたと言える人間性を解放しようという方向性があります。なかでも、ピコ=デラ=ミランドラは、自分のありようを自由に選択できるところに人間の尊厳はあるとしました。権謀術数さえも是としたマキャベリの政治論さえ、政治を宗教や道徳の干渉から切り離し、人間による技術(アート)として論じたととらえることができます。ルネサンス期の芸術作品には生きるということに対する喜びがあふれていて、人間賛歌といえます。だから描かれる人間たちはとても生き生きとした生命力と人間らしさに満ちているのです。
モラリストと称される思想家たちがいます。人間のありかたをじっくりと冷静に観察し、人間の本性をつきつめながらその生き方をモラルとして思索した人たちです。モンテーニュは「私は何を知っているか」という言葉を残しています。なんでもしっているかのように饒舌にしゃべり人をののしることでもてはやされる人がいる現代。つねに自分は何を知っているのかと問いかけ、知っていると思い込んでいる事柄についても懐疑するという姿勢は大切です。
「人間は考える葦である」という言葉で有名なパスカルはその言葉でなにをいいたかったのでしょう。神を見失ってしまった人間は不幸で悲惨であるととらえる。しかし、そうしたみずからが悲惨な存在であるということを自覚しうる限りにおいて、人間は偉大たりうる、そんなことだとおもいます。私たちは、悲惨にも偉大にもなりうる、その間に実存している存在だということがいいたかったのでしょう。また人間は広大無辺の宇宙に比べて実にちっぽけだけれど、その宇宙をすら思考の対象とし自らの卑小を省みることもできることにおいて偉大たりうるとも思います。

2024/7/1