新しい学びのカタチ
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文学

芥川龍之介 芋粥

主人公は風采の上がらない下級貴族。周りからからかわれたりたちのわるいいじめを受けても、「笑うのか、泣くのか、わからないやうな笑顔」で「いけぬのう、お身たちは」というばかり。そんな赤鼻の五位には、ささやかな夢がある。彼にはなかなかありつけない、山芋の入った粥を、飽きるほど食べたい、というものだ。それをききつけた、ある位の高い貴族が、彼に芋粥を存分に食べさせてやる、といい、五位の反応をひきだしてからかうのだ。芋粥にありつきたい一心で卑屈な態度をとる五位を、その後もさんざんにもてあそぶ高級貴族。ついに芋粥を前にした五位は、しかしながら夢がかなうよろこびよりも、ささやかな希望を抱いてひたむきに生きてきた過去を懐かしく思い出すのだった。
満たされない生活の中でささやかな希望をもって生きていくことにこそ人間のしあわせがある、ということなのかもしれない。あるいは、自らつかみ取ったものではない、他人から突如与えられれてかなう願望は、その人の心を満たしはしない、むしろその突然の僥倖に人は戸惑ってしまうということなのかもしれない。

2024/6/26