なにより日本の指導者は欧米諸国の仲間入りを果たそうと必死でした。工業化・資本主義化が急速にすすめられましたが、ずっと働かされる工女さんたちの苦しみ・悲しみはわすれてはなりません。そしてお隣の中国や朝鮮に対しては欧米列強のような接し方をします。衰えた清国には軍事的に圧勝します。朝鮮のとりあいで対立した大国ロシアと、イギリスのそそのかしもあって戦うことになりますが、大きな犠牲がうまれました。かならずしも勝ったきもちのよい戦争とはいえないと思うのですが。また、与謝野晶子が、戦争ムードの中で戦争の本質をうたい上げた歌を詠んだりして抵抗したことは明記されるべき事柄です。その後、朝鮮を併合し植民地支配を行います。文化も歴史も言語も名前も宗教も否定され、土地も経済基盤も奪われていった朝鮮の人々はどんな気持ちになったでしょう。
欧米諸国にはりあおうとしてきた日本の指導者は、不平等条約の改定により大いに自信をえたようです。都市部では文化的生活を送る人々も増える他方で、資本主義化にともなう矛盾もたまってゆきます。第一次世界大戦の勝ち馬に乗って戦勝国となりますが、大戦後の非戦ムードやロシア革命の影響で、様々な大衆運動がまきおこります。それが大正時代のデモクラシーを求めるおおきなうねりとなります。政府は治安維持法と抱き合わせで制限付きの普通選挙をみとめることにします。しかし、民主的な胎動は長くは続きませんでした。世界的な経済危機と生活苦のなかで、不穏な空気が社会を覆いだします。日本軍ははかりごとをめぐらせて、日本国内をだましながら戦争に突進してゆき、これが転がる石のようにとめられない勢いをつけてゆきます。