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丸山眞男の政治思想と戦後民主主義

 大学生の時、私たちはサークルで丸山眞男の政治思想を1年かけて研究しました。丸山眞男は戦後民主主義を理論的に牽引したスターでした。彼の諸著作を読んで、私は当時、こんなに頭の切れる人がいたのか、と舌を巻きました。

 まず丸山は、日本政治思想史を分析し、日本の近代化は西洋の型を取り入れはしたが近代的な主体の形成において挫折したといいます。そして大戦下の日本軍国主義の台頭が許されてしまった構造的な要因を、「無責任の体系」として鮮やかに描き出します。敗戦後の虚脱感の中にあって、少なからぬ日本人が、そういうことだったのか、と目を見開かされ、新しい戦後日本の建設に立ち上がる拠点をつくったといっていいと思います。

 そして、民主主義というものは、制度だけではなく、民主主義を創り出してゆく、自分で考え責任を持って行動する主体性をもった市民が形成されなくてはならないことを繰り返し主張しました。民主主義は、できあがった制度ではなくて、不断の私たちの努力によってつくりあげてゆくプロセスなのだといいたいのです。ほかにも実に多くの仕事を彼はしましたが、一貫しているのは日本は民主主義国家であるということに安穏としていてはいけない、二度と軍国主義や全体主義の国にならないように、民主主義を未完のプロジェクトとして世代を超えてつくってゆかなくてはならない、という問題意識だったと私は思います。戦後の大きな政治的転換から80年がたち、世界的には民主主義の危機が叫ばれる中にあって、丸山眞男の思想は今こそ輝く戦後日本の原点の一つだと思います。

2025/8/23