ひとつには、なぜそうなるのか、なんのためにまなぶのか、こうした目的やそれぞれの根拠になっていることの説明が十分になされず、公式をとにかく覚えて与えられた問題に正しい正解をだすことをもとめられていることが多いからだと思われます。いろんな問題を解決するのに応用できることを感じられると、違ってくると思います。
　また、それまで学んできたことを前提にして進んでいくため、一度躓くと次の単元が分からなくなってしまいがちです。それで私も挫折を経験しました。それに、答えが一つしかないので、不正解が多いと、自分はダメだ、できない、苦手だと感じてしまい、やる気を失ってしまいがちです。
　日常生活に関連した具体的な問題から、急に抽象的になると感じられると、その切り替えがうまくできずに混乱し、いやになることも多いようです。なによりも、受験やテストで点をおおくとることだけを目的にしてしまうと、解き方や公式を当てはめることばかりになってしまって、深く理解したり、その独特の世界の魅力を感じることがないままになってしまいやすいのだと思います。
　また、数学の成績がいい人イコール頭のいいひと、といった単純なイメージが浸透していて、数学ができない自分はどうせ頭が悪いのだ、センスがないのだ、向かないのだ、ときめつけてそれ以上努力しようと思えなくなることもありますね。

　本来、数学は考えることの楽しみを味わったり、なぜだろうと問いを立てて自分のあたまで、あるいはほかの人と知恵をだしあって探究する、そんな魅力のある学問のはずです。しかし現実には、間違ってはいけない、×にされるとへこむ、いい点をとらないとおこられる、こういったプレッシャーを感じながら生徒たちは苦しんでいるように思います。一緒に問題を理解し、自由に解き方をいろんな角度から考え、答えを導くプロセスを楽しむように私は心がけています。そのためにも自分自身が毎日数学を勉強していますが、やはり基礎的な問題がどんどん解けるようになると、テンションが上がるし、考え抜いた末に答えを導き出せたときはいいようのない快感があります。脳が疲れているときでも、基本的な数学の問題を復習して説いていると、気分が落ち着き、頭がクリアに冴えていくのを感じられます。

　数学の苦手意識を克服するためには、やはり小さくとも、わかった、できた、という成功体験を多く重ねることで自信をつけていくことが大切だと思います。たとえ出した答えが正解ではなくても、答えを書き写して間違ったことを確認しておわりにするのではなく、なぜそうなるのか、自分はどうして違ったこたえをだしたのか、を考えて、しっかりと納得することが力になっていきます。私はヴィデオゲームがすごく苦手で、一切手をつけませんが、数学をみなさんが大好きなゲームだと思い込んで、難しい問題も強敵を倒すつもりで挑戦し自分のレベルが着実にアップし成長することを感じられるようになれれば、きっと数学はたのしくなると思っています。