数学というのは、数量・構造・空間・変化といったとても抽象的な概念をあつかうので、苦手な人が多い教科です。論理にもとづいて、厳密にものを考えるのが好き、という人もいます。数を数えたり、図形を扱うことに始まり、自然現象や経済・情報など、あらゆる身の回りのことの背後にある法則性やパターンを探究し、数式や理論で表現したり、予測したり応用することができるんです。
数学には、論理や証明を通じて数や図形の本質的な性質を明らかにしようとする純粋数学と、現実世界の現象を数学的にモデル化して解明・予測する応用数学があります。両方の間を往還すると、その有用性とすばらしさが分かってくるのではないかと思います。
数学というのは、物事の本質をとらえるための独特の「言語」であり、論理的に考えていくきわめて知的な営みであるといえます。
数学の構成
数学は単元ごとに段階的にならうのですが、全体の構成を知っていると、いまやっていることの位置や意味が分かってくると思います。①代数学は、数や式の構造や法則を扱います。方程式の解き方から始まり、群・環・体などの抽象的な構造に発展してゆきます。そして、対象の構造や操作のルールを明らかにするという役割があります。②幾何学は、図形や空間の性質をあつかいます。例えば三角形の合同・相似や、円の性質、曲線や曲面、多様体などです。空間の中で形や位置関係を追求します。③解析学は、関数・極限・微積分など、連続性や変化を扱います。これらは、無限や極限といった理念的な概念を基礎とします。変化や滑らかさの性質を厳密にとらえる役割があります。④数論は、整数の性質やその規則性を探ります。古くからありますが、現代では暗号などにも応用されます。整数という、もっとも基本的な数に秘められた深い構造を明らかにします。
ほかにも、図形の本質的な形を抽象的にとらえる位相数学というのもあるそうです。以上まとめるなら、代数学は構造の学問、幾何学は形と空間の学問、解析学は変化と連続の学問、数論は数の性質の学問、位相数学は形の本質(連続性)の学問であり、これらは互いに結びつきながら発展してきました。
中学・高校の数学では、これらがぶつぎりにされて、段階的に教える構成となっている感じです。それぞれの分野がどうつながっていて、どのような意味があり、どうして人間にとって重要なのか、何の役にたっているのか、そういったことが明らかにされずに、受験やテストのために単元ごとの問題を解く、そのやりかたを覚えることに終始しているように思えます。だから面白くないんではないでしょうか。そして何のためにやるかわからない、意味が分からない、という感じで、とにかくやらなくてはならない、苦手な教科になってしまっていると感じられます。
ちなみに、以前数学が役に立っているという話の例として、ロケットを打ち上げるのにも数学は不可欠なんだ、ということをある高校生に話したら、「いや、私ロケット打ち上げませんから」と言われて、困ってしまいました。