アフリカの飢餓に苦しむ人々をなんとかしたい、と思ってきた。アフリカの現状は、なお貧困率がとても高く飢餓や栄養不足が深刻である。経済成長が一部の国では進んでいるとはいえその恩恵は一部エリート層と海外投資家にしか享受されない。多くの地域ではインフラ整備がなされておらず、安全な水や電気、教育・医療にアクセスできない人が多い。政治的にも汚職やクーデター・内戦が頻発することで安定した社会が形成できない。
このようなアフリカの苦境は歴史をふりかえることによってしか正しく理解できないと思う。アフリカは人類生誕の地といえる。古代ではエジプト文明だけでなくアクスム王国(エチオピア)やクシュ王国(サハラ以南)も栄えた。7世紀以降イスラム教が北アフリカを中心に広まり、サハラ砂漠を横断する交易や文化交流が活発だった。アフリカは天然資源に恵まれ、多様な文化が形成され、しっかりした生活様式が各地にあったのだ。西アフリカではマリ帝国やソンガイ帝国が繫栄し、金や塩を資源とした交易をおこなってその富を世界に誇ってもいた。
もともとアフリカには奴隷貿易があったとはいえ、スペインやポルトガルがアメリカ大陸でみずからの支配の下で激減した労働人口をおぎなうために大量のアフリカの黒人奴隷を送り込むことで奴隷貿易が大規模化した。そのことでアフリカが被った損害ははかりしれない。さらにヨーロッパ諸国はアフリカをほぼ完全に分割し植民地支配を行った。そして徹底した経済的収奪と文化的抑圧をおこない人種差別がなされた。こうしたヨーロッパ諸国のおこなった支配がアフリカの基盤を破壊してしまいアフリカの人々を縦にも横にも分断してしまったことが、現在のアフリカ諸国のくるしみの歴史的淵源であることはまちがいない。
第二次大戦後のアフリカ諸国はつぎつぎと独立したけれど、人為的な・直線的な国境線を植民地分割で引かれたことにより、国家間・民族間の内紛・対立がその自立的発展をさまたげた。さらには米ソ対立の構図にまきこまれ、東西代理戦争の舞台ともなってしまった。
こうした歴史を踏まえると、たべものがなくてこまっているアフリカの人たちに直接支援を送る、ということだけにとどまることなく、アフリカの人たちが社会の安定と生活の基盤を自ら作っていくことを世界は支援する必要があると私は思う。アフリカを「最後のフロンティア」とみなしてさらなる収奪の対象にするような海外の動きは批判されるべきだろう。アフリカの人たちが自分たちの歴史や文化や国土に誇りをとりもどし、自分たちの社会を自分たちの力で作っていくことを、私たちは支えられるようになりたいと思う。