まず16~17世紀ヨーロッパでは貿易で輸出を増やそうという重商主義の考えが出てくる。18世紀イギリスで産業革命がおこり商業貿易だけでなく自国で加工した工業製品をどんどん輸出し利益を得ていく。リカードは各国が国際分業で得意分野の輸出に力を入れるのがよいという比較生産費説を唱えた。彼が自由貿易がいいとしたのに対して、後進のドイツのリストは保護貿易を主張し自国産業をまもるべきと考えた。
国際貿易では外国為替という決済方法がとられるようになる。異なる通貨の交換比率のことを為替相場という。たとえばドルに対して円の価値が高くなると円高(輸入に有利)、低くなると円安(輸出に有利)である。戦後1ドル360円の固定相場制は、やがて変動相場制になる。投機によってみだされずに為替相場を安定させることは世界的にも、各国にとっても課題となる。なお日本の国際収支はかつては貿易黒字が多かったが、近年は対外金融債権の利子・配当金などがおおくなっている。
世界恐慌後のブロック経済化は第二次世界大戦の一つの要因とみなされ、経済関係と平和との関係が意識されるようになったと言える。1945年IMFと世界銀行ができて、ドルを基軸通貨にし、またGATTもむすばれて自由貿易が戦後国際経済の原則となった。ドルは当初は金の裏付けがあったが軍事や海外投資でドルを発行しすぎてドルの信頼はさがった。1971年ニクソン大統領はドルと金の交換をやめ、結果主要国は変動相場制に移行することになる。財政も貿易も赤字となったアメリカは、プラザ合意でドル安にもっていく。その後もサミットを開いてこの問題をはじめ調整がはかられた。西側諸国内では、自由貿易を原則としつつも各国の利害・思惑がからみあって、後発国も巻き込みながらの「経済ゲーム」が展開される。
1995年には経済的な紛争処理手続きを強化するためのWTOが発足した。1990年代、社会主義圏の倒壊を受けて、資本主義の勝利が謳歌され自由主義市場経済が世界大にひろがってゆき、ヒト・モノ・カネ・情報などが地球を行き交うグローバリゼーションが進んだ。貿易・投資・金融の自由化が進み、多国籍企業が世界をまたにかけ、苛烈な競争の下で弱肉強食の時代となってゆく。投機集団が短期に莫大な利益を得ようとして、アジア通貨危機などの波乱を巻き起こす。2008年にはリーマンショックが世界金融機に発展し、信用不安から金融機関・企業の破綻と深刻な世界的不況をもたらした。G7は新興国(BRICSなど)を加えてG20 サミットに拡大し、各国が協調しなければ経済が安定しないはずなのだが中国・ロシアとアメリカの政治的対立ともからむ各国利害の衝突が目立つ。
中国は、ソ連の中央集権的な計画経済が硬直化したのを横目で見つつ、段階的に市場経済を導入していった。そして経済成長を実現してゆき、ソ連崩壊をしり目に「社会主義市場経済」を宣言する。「世界の工場」として2010年にはGDPで日本を抜いて世界2位となる。海外に資本を投資したり金を貸したりして影響力を増大させてゆく。近年は成長が鈍化し少数民族問題・環境問題・格差問題などを抱えながらも専制的支配を強化している。
石油危機などで世界経済が混乱してから、保護主義が台頭してきたり、地域主義にむかっていったり、多国間より近隣国と、あるいは二国間での貿易交渉が行われるなどの多面的なうごきをみせている。しかしEUもギリシャなどの債務危機問題や、難民への対応、イギリスの離脱、極右勢力の伸長、ロシアとの関係などで動揺している。アジア太平洋地域・アメリカ大陸でもそれぞれ地域統合の動きとそれに対するアメリカ第一主義などの反動のあいだを揺れている。もちろん経済関係が国家間の政治的対立に影響したり、その逆の影響があらわれたり、ねじれたかんけいになったりもする。今後の世界の動向を読み解くためにまずは関心をもって問題意識をさだめながら探究してほしい。
発展途上国(グローバルサウスとも最近よぶ)と先進国(グローバルノースとも)の南北問題も焦点である。後進国といわれる国々では植民地からの独立後もモノカルチャー経済の構造がのこった。その中から工業化を進める地域(NIEs)がでてくる。中南米諸国が借金漬けとなった累積債務問題もある。最低水準の生活が維持できない国はLDCまたは最貧国と呼ばれる。このように南のなかにも開きが出る南南問題もある。
また、途上国の中には経済発展を非民主的体制の下で強権的にすすめる開発独裁体制が生まれることも多い。先進諸国や民間からの後進国への支援の質がとわれる。開発独裁体制を支えるような支援ではなく、貧困に苦しむ人々に届くような、さらに彼らが自分たちの力で生活をしっかりとしたものにしてゆけるような支援がもっとされるべきだと思う。
日本の中でも多くの異なる文化を持つ人々とともに生きてゆく時代になった。異なる文化的背景・価値観・考え方をもつ人々が、互いのことを認め尊重しあい、対話と交流をつうじてお互いに自由に幸福に生きていける社会を、世界をつくってゆくことが大切だと思うのだ。