経済とは、財やサービスを生産し消費する人間の活動である。私たちの生活は、財の生産・流通・交換・消費と、所得の分配という一連の行動から成り立っている。世界経済は、一国単位の国民経済をもとにしている。国民経済は主に家計・企業・政府を主体とする。それぞれの間を通貨と財・サービスが循環している。
資本主義経済は自由放任を原理とする。現実には貧富の差や労働者と資本家の対立が深刻になる他方で帝国主義化や世界恐慌など様々な問題を引き起こした。ケインズによる、政府の積極的な有効(実現性のある)需要創出で経済の安定を図るという考え方が、「大きな政府」とよばれるが、各国で採用されていった。現代では資本主義化の自由競争や私有財産制に基づく自由な経済活動を保障しながら、政府が財政政策を通じて経済に関与する修正資本主義となっている。しかし政府の介入を減らし、小さな政府にすべきという新自由主義が台頭し、格差問題が深刻化している。
企業のほとんどは私企業であり、利潤をできるだけ増やすことを目的とする。個人企業に対して、法人企業は多くが株式会社として株式を発行して資金を集めている。株主は配当を受け取ったり株主総会で議決に参加できる。大企業で一般の株主が経営にかかわることはないので、所有と経営は分離されている。現代の企業は競争力を世界で高めようとし、他企業を合併や買収したり持ち株会社として他社を統括支配しようとする。また巨大企業は多国籍企業となっている。
企業は儲けようとするあまり、公害問題・消費者問題・労働問題を引き起こすことがある。法令順守や企業モラルの必要性が求められるようにはなってきた。情報公開や適切な企業統治が求められてもいる。また、社会貢献活動を行ったりスポーツ・文化芸術活動の支援を重視する企業も現れてきた。企業の社会的責任が問われるようになってきた。
資本主義の市場経済・自由経済のもとでは人々は自由な経済活動を行い、より大きな利益と満足(効用)を得ようとする。市場において供給者と需要者がそれぞれ自己の利益のために売買を行えば価格が変動しつつ供給と需要が自動調節されるはずである、この市場機構に従えば社会全体の利益が大きくなる、とアダム・スミスは考えた。しかし、例えば独占・寡占市場になっているなどの理由で市場機構がうまく働かなくなることがある。また、市場機構を通じてでは適切に供給されない公共サービス・公共財もある。さらに環境破壊などの形で市場の外部に損害を与える外部不経済(反対にプラスの影響をあたえるのは外部経済)もある。これらは市場の失敗あるいは限界といわれる。
企業は大きいほどスケールメリットがあるので巨大化に努める。そのため資本の集積や集中に必死となる。独占・寡占が進むと財・サービスの価格が下がりにくくなる。また、価格だけでなく品質・デザイン・宣伝広告などで競争が行われる。政府は消費者の不利益にならないように市場に介入して一定の規制・制限を加える必要が出てくる。
ある時点における経済規模の大きさを測る指標がストック、ある一定の期間に生産された量の経済規模を測る指標がフローである。たとえば年度末にどれだけ資産・負債・資本があるかとこの一年でぢどれだけ出費しもうけたかをわけている。経済成長とは、一国の経済活動の水準が拡大したり縮小したりすることをいう。経済成長の過程では好況→後退→不況→回復を周期的に循環する。短期間に起こる急激な景気後退を恐慌という。一般的に物価は好況期には上昇し不況期には下落する。
財政とは国や地方公共団体の経済活動のことで、経済成長を促して国民生活を安定させるものである。財政には、資源配分の調整(公共財の供給)、所得の再配分、景気の安定化などの役割がある。累進課税制度や社会保障制度には、景気を安定させるはたらきもある。なお国・地方公共団体が租税を課し、徴収するには、法律を制定する必要がある。またそれぞれ国債・地方債を発行できる。赤字国債を発行するには特例法を制定しなくてはならないし、新たに発行する国債を日本銀行が直接引き受けることも禁止されている。現状では国債の発行残高はきわめて増大しており、財政の硬直化をまねいている。
資金を貸し借りすることを金融という。企業が手持ちの資金を活用してそれを事業活動に用いることを内部金融という。他者から資金を調達して活用することを外部金融という。外部金融のうちの直接金融とは、株式や社債を発行することで、間接金融とは金融機関から借り入れることである。
中央銀行には発券銀行・政府の銀行・銀行の銀行という役割がある。景気や物価を安定させる金融政策も行う。たとえば公開市場操作で間接的に通貨の供給量を増減させようとする。日本の日本銀行が有価証券を買うと通貨供給量が増え、売れば資金は吸収されるという具合だ。他にも一般の銀行が預金する割合を操作するということも行われていた。近年は日銀が短期金融市場で金利がゼロになるように誘導したり、各種金融市場で多額の資金を供給してきた(量的緩和政策)。さらに市中銀行が日銀の当座預金に預けると、逆に金利を払う、というマイナス金利政策も行った。
敗戦後の日本はGHQの下で経済民主化政策が当初は実施された。財閥解体・農地改革(寄生地主をなくす)・労働民主化などだ。政府は、重要な産業の生産回復に重点を置いた。資金を復興金融金庫から調達してばかりいるとインフレになったため、GHQは経済改革と税制改革を指導した。1950年の朝鮮戦争での特需で景気が回復した。
その後高度経済成長を実現する。池田内閣は「所得倍増計画」を掲げたが、1968年に実際GNP世界第二位となった。他面で公害問題・物価上昇など諸問題が起きた。ドル危機と変動相場制への移行、石油危機とインフレなどで1970年代は景気が日本も落ち込んだ。このときの不況下のインフレをスタグフレーションという。こうした苦境もなんとか切り抜け1980年代は比較的高い経済成長を維持した。
しかしアメリカをはじめとした国々との間で貿易摩擦が深刻となり、プラザ合意後は急激な円高となった。それによって輸出産業は打撃を受け、日本は円高不況となる。企業は海外に生産拠点を移し始め産業空洞化が起こる。政府はこれをのりきるために国内需要を増やそうとした。日銀も低金利にしたため、不動産や株式への投機が異常に活発に行われた。株価や地価が高騰し、内容のないバブル景気となった。日銀が金融を引き締め、政府も地価税を導入するなどした結果、バブルは1991年はじけた。
その後長らく日本経済は不況に苦しみ抜け出せないデフレスパイラル状態になった。さらに2008年のアメリカ発世界金融危機をうけてマイナス成長となった。貧困・格差の拡大が大問題となっている。
産業革命により世界の産業や社会の構造は変化し続けている。とくにAI技術の進歩はさまざまな課題をつきつけており、私たちの学びや労働のありかたについて考えることを促してもいる。また、大企業の下で、中小企業も苦労を強いられてきた。しかし中小企業はさまざまな創意工夫を凝らしているところも多くある。中小企業は規制緩和による経営難や後継者難などの問題を克服するそのやり方次第で新たな社会をつくる可能性ももっているといえるだろう。他方農業は、戦後農家が減り、農業自由化で経営が苦しくなったりして課題が多い。苦境にありながらも私たちの生活・生存を土台から支えている農業を安定化させるためにはどうすればよいか真剣に考えねばならないと思う。