民主主義のしくみをしり、これを私たちが生かすことが大切だと思う。国会は「国権の最高機関」であり、法律の制定、予算の議決、内閣総理大臣の指名などをする。議員からの立法よりも内閣の提出する法案あるいは内閣の制定する法令のほうが多い現状にあるのを委任立法とよぶが、ほんとうなら私たちの意志を議員が法にしてゆくほうがよいのではないだろうか。国会は衆議院と参議院からなり、それぞれ委員会→本会議と審議・議決されることになっている。両院の議決が割れたときは衆議院のほうが優越される。衆議院は内閣不信任決議をすることもできる。衆院のほうがより民意を反映していて、参院はチェックすると考えられてる。
行政権は内閣が持っている。国会の定めた法律に従いながら行政をするのだ。衆院が内閣不信任決議案を可決した場合内閣はその衆院を解散するか自ら総辞職しなくてはならない。内閣は、総理大臣と複数の国務大臣からなる。内閣の仕事は、法律を執行すること、予算を作成すること、条約を結ぶことなどだ。内閣は政令を、各省は省令をさだめることもできる。内閣は閣議での全会一致で意志決定する。一般的にいっても、現代においても、行政権は大きくなりすぎる傾向があると言える。日本でも行政改革がおこなわれつつ内閣の機能は強化されてきている。
司法権は、他の国家機関の干渉を受けず独立していなくてはならないとされる。裁判官も独立して職務を行使できなくてはいけない。つまり政治家とかから圧力をうけたり周りに押されて信念を曲げたりすることがないようにしなくてはならない。ただし最高裁の裁判官は制度上は国民審査をうけている。裁判は慎重を期して、3回まで受けられる。私人間の争いは民事裁判が、犯罪は刑事裁判が行われる。日本の裁判所は、法・政令が憲法に違反していないか審査する権利をもつ。立憲主義を貫くためだ。だから最高裁は「憲法の番人」ともいわれる。それは多数派の制定した法律によって少数派の人権が侵害されることがないようにという意味もある。
日本でも近年司法制度改革で裁判の迅速化・効率化が図られている。有権者が刑事裁判にかかわる裁判員制度も導入されたが、問題点も指摘されている。また、刑事事件の被告人の人権も守らなくてはならない。現行犯以外は、裁判所の令状なしに逮捕や捜索はされない。貧困などにより弁護人を雇えない場合は国選弁護人がつく。強制や拷問・脅迫による自白や、不当に長く拘留・拘禁されたあとの自白は、証拠にできない。判決確定後も無罪になるような証拠が見つかった場合、再審を請求できる。冤罪はあってはならないがそのばあい刑事補償請求権が認められる。
民主的な選挙の原則としては、①普通選挙(一定の年齢に達すればだれもが選挙権がある)②平等選挙(みんなが同じ票数を投票する)③秘密選挙(誰に入れたか知られない)④直接選挙(候補者を直接選ぶ)がある。日本の衆議院選挙は選挙区から1名の投票者を出す小選挙区制と、各政党の得票数に応じて議席配分する比例代表制の、組み合わせである。投票率の低下、選挙区間の一票の格差、腐敗行為などの課題がある。選挙がより実質的なものとなるためにはどうすればよいだろうか。
複数の政党がおのおのの政策を実現させるため有権者の支持をめぐって競争するのが政党政治である。与党は政権を支え野党はこれを監視・批判したりするのが基本だ。二大政党制の国もあれば多党制あるいは実質的に一党支配の国もある。戦後の日本は保守政党と革新政党にわかれながら自民党一党優位が続いた。企業や団体からの政治献金に頼る政党は多いが政治家個人への献金は禁じられている。一定以上の規模の政党には交付金が出る。お金を多く持つ政党が、お金をもっている人たちから、よりお金をあつめて、選挙戦を有利に戦うとか、お金持ちにばかり有利な政治をしてお金をさらに集めるとか、そんなことはあってはいけないと思う。
「地方自治は民主主義の学校」といわれる。地方自治の原則は、国の統治機関から独立した自治団体であることと、住民が自治することであるからだ。地方の政治を運営する議会の議員も主張も、住民が直接選ぶ。議会は地方独自の条例を制定したり予算を定める。首長がこれを執行する。両者は、抑制と均衡の関係でチェックしあう。住民には直接請求権があり、リコール(やめろという)、条例の制定・改廃の請求もできる。しかしほとんどの自治体は財政的に国に頼らざるを得なかった。いまも財政は厳しい場合が多い。地方分権の流れの中で、住民投票をやろうとかさまざまな地域コミュニティづくりなどがさかんになってもいる。東京一極集中といわれるが地方にはいろんな可能性があると思う。
人々が言論思想表現の自由を保障され世論が重要な役割をはたすのも現代政治の特徴でだ。しかし大衆民主主義が大衆迎合主義(ポピュリズム)をうむことがある。マスメディアあるいはあらたなメディアを通じての世論操作の危険もある。私たちは批判的な洞察力や政治意識、メディアリテラシーを身につける必要があるだろう。市民運動が社会を変えることもあるし、圧力団体が政治や世論を特殊利益のために影響をおよぼすこともある。自分たちの利益だけを団体の力や金で押しとおそうとすることは、民主主義の本来のありかたに照らしてどうなのか、とも思う。