「私たちは、安全かつ平和に共存するために、共通のルールを決めて考え方の違いや利害の対立を調整し、必要な場合には制裁や強制力を用いて、社会の秩序を維持しなければならない。これが広い意味での政治であり、この政治が繰り広げられる主要な場が国家である。」「国家は、法を定め、法に基づいて秩序を維持するための政治権力(国家権力)をもつ。」このように教科書では政治と国家について定義されている。国家の三要素は国民・領域・主権である。
ヨーロッパで絶対王政に対する市民革命を経て近代的な民主政治は始まった。その三つの原則は基本的人権の保障、国民主権、そして三権分立である。まずイギリスのホッブスは「万人の万人に対する闘争」を抑止するために人々は契約に基づいて国家を打ち建ててそのうえで国家に自然権を譲渡すべきと説いた。次にロックはこの契約に基づいて設立した国家に統治を「信託」するとした。そして政府が各人の自然権を侵害した場合の人々の抵抗権(革命権)をみとめた。さらにルソーは社会契約による人民共和国を構想した。その統治はみんなの利益を追求した一般意志にかなうことによって正当なものとなる。
国民主権とは、国の政治の在り方を最終的には国民全体が決めるということだ。三権分立は国民の権利・自由を守るために立法・司法・行政にわけること。現代では、多くの場合直接民主制ではない間接民主制(議会制民主主義)が採用されている。しかし代表による議決は、多数決の原則できめることについては、多数者の専制・少数者の排除になるといった批判があり、考えねばならない問題である。
参政権をもつ人は当初は制限されていたが、様々な運動があり、普通選挙が実現されるようになってきた。国の政治は人の支配ではなく法の支配によっておこなわれるということも民主政治の原則である。
近代民主政治の成立後も第二次世界大戦とファシズムの台頭という惨劇を人類は経験し、これをどう思想的にうけとめるのかが問われた。アーレントは人間どうしが自由に討議する公共性の領域が開かれるべきだとした。ハーバーマスは対話的理性の可能性をおいもとめた。自由な対話・討議によっておたがいを認め合い理解を深めながら合意形成をめざすというのはきわめて大切なことであると思う。