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高校日本史

戦後の歩み(後半)

 こうした中で日本経済は技術革新による経済成長を成し遂げ、高度経済成長の時代を謳歌する。企業はどしどし設備投資をし、新しい産業も生まれた。これらは、終身雇用・年功賃金・労使協調を特徴とする日本的経営に支えられたといわれる。低コスト・高品質の大量生産体制が整えられ、日本製品の海外輸出は増加していった。この間、石炭から石油へエネルギー革命も起こった。他面で食料を輸入に依存する仕組みができる。しかし全体として労働者・農家の所得は増加し、それにより国内市場も拡大し大衆消費社会が現出する。
 高度経済成長期には影の面、すなわち様々な社会のひずみもうみだされた。過疎・過密、交通戦争といわれる交通事故の多発、産業公害の発生と対策の遅れなどなど。苦しむ被害者や支援者のねばりづよい取り組みが社会のひずみを改善させていった。
 アメリカは、ベトナム戦争に敗退する他方、ドル危機に陥り、戦後世界経済のゆらぎのなかで日本や欧米諸国に変動相場制に切り替えることを余儀なくさせる。また、第四次中東戦争が勃発すると、アラブ産油諸国が戦略的に原油価格を引き上げ、日本経済も大きな打撃を受ける。世界的に経済が混迷・低迷してゆき、打開のためにサミットがひらかれるようになる。
 このころ誕生した田中内閣は、日中国交正常化を実現し、日本列島改造計画を打ち出す。公共投資を拡大したことにより、土地、株式への投機、地価の高騰がひきおこされる。石油危機とも重なり、狂乱物価ともいわれる激しいインフレーションが起こった。そのまま深刻な不況に陥ったため、日本経済は戦後初のマイナス成長にもなる。経常収支も赤字となる。こういった状況の中で国民意識としては生活の安定を志向する傾向を示し、これが保守政権を支えることになったと言われる。
 欧米諸国の経済が低迷し続けたのに対して、日本は省エネなどの工夫で比較的早く、高い成長率に戻した。貿易黒字を拡大させていく日米と欧米諸国の間には経済摩擦がおこる。こうした中でも日本は「経済大国」の地位をうちたてた。円高が続くことで輸出産業が不況となっても、国内需を拡大させることで対応した。しかし、1980年代後半には地価や株価が暴騰し、経済が「バブル化」してゆく。他方で極端な長時間労働は「過労死」さえ生み出す。中曽根内閣は行財政改革を推進し、竹下内閣は消費税を導入する。
 米ソはそれぞれ内部矛盾に苦しみつつ対立を再び激化させる。ソ連のゴルバチョフが登場するとペレストロイカという改革を断行した。それは米ソ関係の改善も含み、1989年ついに「冷戦の終結」が米ソ首脳の間で宣言される。ソ連が自由化を進めると、東欧諸国はドミノ倒しのように東側陣営から離脱してゆく。冷戦の象徴であったベルリンの壁は、自由を求める人々の手で打ち壊され、東西ドイツが統一する。そしてついにソ連は内部崩壊・解体する。
 ヨーロッパでは、ECがヨーロッパ連合(EU)に強化され加盟国を増やしてゆく。世界は対立から協調へ向かうかに思われたのだが、冷戦終結直後にイラクを相手とした湾岸戦争をアメリカは主導し、日本も協力を迫られる。そしてタガが外れたように世界各地で地域紛争が勃発する。国連平和維持活動(PKO)による調停が試みられ、日本の自衛隊もカンボジアに海外派兵される。以後、世界で紛争がやむことはなく、アメリカ主導の対アフガニスタンや対イラク戦争に日本も支援を拡大してゆく。
 平成に入ってから、その金権政治が次々と明るみになった自民党政権は選挙に敗れ、非自民連立の細川政権が誕生した。これに対して自民党は社会党を抱き込んで、村山政権を誕生させる。このとき戦後日本の対抗軸だった社会党は、基本政策を次々に放擲する。さらに次の橋本政権は行財政改革を一挙にすすめようとしたが、アジア諸国の通貨・金融危機に直面し、日本の景気も後退してゆく。こうしたなかで、自民党政権は日米同盟を基軸として、アメリカへの依存を深めてゆく。
 また、1990年代に入り、泡がはじけるように日本の「バブル経済」は一気に崩壊した。以降平成不況に苦しむことになる。株価・地価は暴落し、実体経済も苦境に陥る。企業はおもに従業員の削減でのりきろうとしたため大量の失業者が生み出された。給与も削減され、消費は落ち込み、不況が悪循環的に長期化した。次第に破綻する金融機関も出て、企業の多くも倒産した。輸出の競争力も落ち、技術革新も進まない。アメリカ主導のグローバル競争の荒波に翻弄される。
 こうしたなかで、「構造改革」を叫ぶ小泉内閣が熱狂的支持のもとで登場した。小泉内閣は民営化・規制緩和を強引にすすめる、新自由主義と呼ばれる政策を勧めた。福祉は切り縮められ所得や地域間の格差が拡大した。
 世界的な金融恐慌も発生し、国民の不満の高まりの中で自民党に代わる鳩山民主党政権が誕生するが、民主党政権は不安定なまま東日本大震災にも直撃され自民党に政権の座をあけわたす。成立した安倍政権は、自国が攻められなくても同盟国に参戦できる集団的自衛権の行使を可能とした。
 日本社会は少子高齢社会となり労働人口も減少している。こうした条件のなかで、新たな価値観をみんなでつくりだしながら、人々がほんとうに自由と幸福を実感できるような社会を、若い人たちを中心としあらゆる世代が力をだしあいながら作ってゆく必要があるのではなかろうか。とりわけて、深刻化する地球環境問題や、格差の拡大などの諸問題をどう探究し解決策をだしてゆくのか、みんなで考えてゆきたいとおもう。

2024/11/30